コラム
通信制高校は就職に影響がある?実際の就職率や就職先の傾向、面接の対応方法を解説
「全日制高校と比べて、通信制高校は就職に不利なのでは……?」と不安な人も多いかもしれません。しかし、そんなことはありません。通信制高校へ通うことのメリットを見つけて、そのメリットを活用した高校生活に励めば、チャンスが広がるはずです。このコラムでは通信制高校の特徴をご紹介し、高校生活でおすすめしたい取り組みについても触れます。捉え方を変えれば、「通信制高校には大きな可能性がある」と感じられるでしょう。
目次
通信制高校卒業後の就職率とは?
まず、通信制高校の卒業生はどれくらいの割合で就職しているのでしょうか。文部科学省の調査では、平成30年度(2018年度)に通信制高校を卒業した生徒の就職率は、19.6%でした(令和元年5月1日現在)。つまり約5人に1人が就職しています。全日制高校と比べた場合は、むしろ通信制高校の就職率のほうが高いことが分かります。
このようにデータとしては、通信制高校は就職において不利という印象はありません。
(出典)文部科学省「学校基本調査」
卒業者数(人) | 公共職業能力開発施設等入学者 | 就職者 | 左記以外の者 | 不詳・死亡の者 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
実数(人) | 割合(%) | 実数(人) | 割合(%) | 実数(人) | 割合(%) | 実数(人) | 割合(%) | |||
全日制 | 1,030,982 | 5,459 | 0.5% | 176,936 | 17.2% | 55,458 | 5.4% | 140 | 0.0% | |
定時制 | 19,577 | 489 | 2.5% | 8,237 | 42.1% | 4,615 | 23.6% | 23 | 0.1% | |
通信制 | 計 | 56,283 | 426 | 0.8% | 11,026 | 19.6% | 21,070 | 37.4% | 484 | 0.9% |
公立 | 7,982 | 59 | 0.7% | 1,745 | 21.9% | 4,091 | 51.3% | 120 | 1.5% | |
私立 | 48,301 | 367 | 0.8% | 9,281 | 19.2% | 16,979 | 35.2% | 364 | 0.8% |
通信制高校で得られる卒業資格は全日制と同じ?
通信制高校を卒業したときの資格は「高校卒業」であり、全日制高校と変わりはありません。そのため就職などで学歴を伝えたり表記したりするとき、全日制高校を卒業した人と差異はないのです。しかし、一般的に通信制高校が不利と言われ、全日制高校への進学を進められるのはなぜなのでしょうか。
通信制高校は就職が不利と言われる理由
通信制高校への入学・編入理由は人によってさまざまです。純粋に自分のペースで学べる環境を望む人もいれば、「経済的に働く必要があったから」「健康・身体的理由により毎日通学することができないので」など、全日制高校に何らかの事情で通うことができない、もしくは何らかの事情で退学して新たな道を選んだ人もいます。
企業の採用担当者には、このように通信制高校へ進んだ背景を深読みしたり、知識不足で偏見を持ったりする人も、まだまだ少なくありません。
しかし通信制高校への進学者には、プラスに捉えられる面があります。
一つめは、決断力です。「自分なりの理由があり、あえて通信制高校を選んだ」「やむを得ない事情があった中、前向きに学ぶ道を選んだ」など、多数派の全日制高校ではなく、自分らしく学ぶ環境を選択しているのです。
二つめは、入学・編入後の自己管理力です。多くの全日制高校では、学校や学年、課ごとにカリキュラムや時間割が決められています。それに対して、通信制高校は自分で時間割を組むのが一般的。簡単なことではありませんが、見方を変えれば「自己管理できた人が卒業できるのが通信制高校」とも言えます。
つまり、通信制高校での経験をプラスにアピールすれば、就職で不利になるということはないのです。
就職試験で通信制高校を選択した理由を聞かれた際の対応例
ここからは、就職試験で「どうして通信制高校への進学を選んだのか」と質問された場合にどのように受け答えすれば良いか、その対応例をご紹介します。
他にある目標と学業との両立
「将来の夢に向けて専門的な資格を取得したかった」「スポーツや芸事などに打ち込みたかった」など、学業と並行して成し遂げたいことがあった場合です。「どのように工夫して両立を果たしたのか」「もともとの目標はどう達成されたか」といった点は評価ポイントになるでしょう。
アルバイトなど、仕事と学業との両立
社会人の一員として仕事に励んだ経験は、ぜひアピールしたい内容です。「どうしてその仕事やアルバイトを選んだのか」「そこで何を学び、何を成し遂げたのか」といったことも、就職試験において重要視される可能性が高いでしょう。「この人は入社後にどのように活躍してくれるのか」をイメージできるためです。
人間関係や体調の悩みを乗り越えての進学
「校風の不一致や人間関係に悩んで全日制高校を選ばなかったこと」や、「健康上の理由で通信制高校を選んだこと」は一見、懸念点として捉えられるかもしれません。しかし、学生時代から周りと異なる困難を乗り越えた人は、人間的に大きな成長を遂げているとも言えます。大変なことに立ち向かう姿勢や、仲間への思いやりなど、若いうちから成熟した姿をまっすぐに伝えてみましょう。
このように通信制高校を選んだ理由や、選んだ先での努力や成長を伝えることができれば、就職試験は怖いものではありません。
通信制高校からの就職を有利に進める方法とは?
ここからは、就職に向けて、通信制高校へ入学・編入した後にどのような学生生活を送れば良いかをご紹介します。こちらもあくまで例ですが、自分の目指すもの、自分ができることに近いものがあれば、ぜひ参考にしてください。
仕事で活用できる資格やスキルを身につける
高校は一般教養を磨く場としてとても重要です。一方で、仕事に直結するような専門スキルや資格を取ることは、就職で有利に働くでしょう。学校の授業の他に、独学や予備校・塾などで専門スキルのゲットや資格取得に向けて学ぶのはおすすめです。
まずは、一般的な会社で広く活かせる資格です。例えば日商簿記検定や秘書検定、ビジネス能力検定、MOS(WordやExcelなどのパソコンソフトを証明する資格)などはさまざまな会社へアピールできるでしょう。さらに1級や2級、3級などといったランクもあるため、簡単な級から挑戦すれば、ゼロから勉強するハードルは低く感じるのではないでしょうか。
また英検やTOEICなどの語学関連もおすすめです。一般的な通信制高校では、学力偏差値を基準にしたり公表したりしていません。そのため他者が学力を図ることは難しいですが、このような語学に取り組んだ実績があれば、学ぶ力や努力した姿を評価してもらえるでしょう。
他にも、ITパスポートなどのITに関連する資格や、医療事務や宅地建物取引士(宅建士)、ファイナンシャルプランナー(FP)などといった資格は、特定の企業・法人や職種では重宝されるでしょう。
こうした専門資格は独学で学べるものもあるため、「経済的に予備校や塾へ通うのは難しい」という人も、テキストや通信講座の活用で資格やスキルを手に入れられます。また反対に「高校での勉強と両立して独学できるかな……」と不安な人は、思い切って予備校や塾の力を借りるのも良い選択です。自分に合った方法で学んでみましょう。
専門的な科目やコースのある高校で学ぶ
独学や予備校・塾で資格やスキルを手に入れる方法をお伝えしました。しかし一方で「もとから専門的な科目やコースのある通信制高校で、仕事に直結する教養を学ぶ」という選択肢もあるでしょう。
例えば商業系の授業を行う高校では、日商簿記検定やMOSを受けるための勉強もできます。他にも、アニメなどの美術系、調理師免許取得に向けて学べる食品系、スポーツを本格的に学べるコースを用意している高校もあります。
また、海外留学がカリキュラムに組まれた高校もあります。英検やTOEICなどの資格を取りながら英語を学んだ上で、「しっかりと通用する英語力を磨きたい」という人にはおすすめです。
このように「就きたい職がある」「将来の夢に向かって本格的に学びたい」という人は、専門的な科目やコースのある高校で、直線距離での達成を目指して学ぶのも良いかもしれません。
アルバイトやインターンシップ、ボランティアなどで実践する
上記のような専門的な資格やスキルも就職では役に立ちます。しかし、周りとの協調性や、突発的な出来事が起きたときの判断力など、「一人の社会人として活躍できるか」という点も大きな評価ポイントです。こちらは実践的なもので身につくと言えます。
そこでおすすめなのが、アルバイトやインターンシップ、ボランティア活動です。ある特定の任務を担当して無事に達成することで、仕事に対する実行力や責任感を育てることができます。またこれらの活動では、集団行動も必要になります。周りと話し合いながら仕事を進めたり、困っている仲間を助けたりという場面も出てくるでしょう。この中で協調性なども育まれ、未来の社会人として大きく成長できます。
また、もし将来就きたい職業が明確にある場合は、その業界のアルバイトやインターンシップ、ボランティアへの参加で実績を積むこともできます。「将来の夢に向けてのトレーニング」と捉えて挑戦しましょう。
例えば飲食業界を目指している人は、レストランなどの飲食店で実務を経験し、調理師免許などの専門資格も得られれば、鬼に金棒です。介護の世界で活躍したい人は、介護施設などでのボランティアを経験してみましょう。こういった努力を同じ業界の就職試験でアピールすれば、「この仕事をそこまで本気で目指しているのか」と採用担当者に伝えることもできます。
このように、通信制高校に通いながら取り組んだことは、就職試験で強くアピールしましょう。ここで重要なのは、「何をしたか」ではなく「その取り組みを通して何を手に入れたか、どう成長したか」です。その点を常に意識しながら、就職に向けてさまざまな挑戦を楽しみましょう。
通信制高校卒業後の就職先について
通信制高校の卒業生はどのような業界へ就職しているのでしょうか。文部科学省による学校基本調査(令和5年度)によれば、通信制高校に通った11,398人中3,477人(全体の30.5%)がサービス職業従事者として就職したようです。その次に多いのは、全体の20.6%を占める生産工程従事者です。
通信制高校へ通いながらアルバイトやインターンシップ、ボランティアに励んだり、専門資格を取ったりと、学生生活で励んだことはきっと就職試験で大きな助けになります。そしてもちろん就職後も、成功体験やスキルが自信に変わるはずです。何か明確な目標がある人も、「何かしらにチャレンジしてみよう」と思う人も、ぜひ前向きに取り組んでみてください。
通信制高校なら、開志創造高等学校
「就職を成功させたい」「自分に合った仕事を見つけたい」そんな人には、開志創造高等学校をおすすめします。
当校の強みの一つは、キャリア教育。当校も所属するNSGグループの4大学、34専門学校と提携し、さまざまなキャリア体験学習を行っています。また任意で、NSGグループの108法人(世界849ヶ所)での職業体験も叶います。こういった体験ができる業種は、エンターテインメント分野から医療・福祉、食品・農業、サービスなど、多岐にわたります。
特に職業探求専攻では、まずはさまざまな仕事を知った上で、気になった職業への学びを深めることができます。
せっかく高校へ通うなら、「夢の仕事」「なりたい自分」への最短距離を目指しませんか。
まとめ
ここまで、通信制高校に通った場合の就職状況についてご紹介しました。「全日制高校と比べて通信制高校は就職に不利」と思われがちですが、そんなことはありません。
通信制高校では自分に合った環境で学べる上に、自己管理能力を磨くことができます。またその柔軟なカリキュラムや専門コースを活用することで、専門資格やスキルをゲットすることもできるでしょう。「高校卒業」という学歴を手に入れながら、より可能性の高い学校生活を送れるかもしれません。通信制高校で学ぶ期間を大きなチャンスと捉え、入学・編入を検討してみてください。